「おもちゃができたら、まっさきに僕が遊ぶんや…」

 おもちゃをつくるだけでなく、加藤裕三の50年の人生にはグリコの「おまけ」の箱をあけるときのワクワク・ドキドキが、いっぱいいっぱい詰まっていた。加藤の友人でもあった詩人・吉田光夫が彼の作品を紹介するとともに「人間・加藤」の魅力を探る。


 大人たちを巻き込んでの食玩(おまけ付き菓子)ブームが本格化したのは90年代後半。海洋堂が制作した本物よりもリアルな(?)小さな動物たちが入った『チョコエッグ』がきっかけでした。今では30代〜40代の大人たちをターゲットにした『タイムスリップグリコ』などレトロ復古調の食玩が話題を呼んでいます。この食玩ブーム、実は80年代後半にルーツがあったことをご存知でしょうか?

 1987年、グリコの「おまけ」はそれまでのスタイルを一新し「グリコの動くおまけシリーズ」として発売されました。動物や昆虫、鳥、魚などシンプルにデフォルメしてユニークな動きを加えたおもちゃで、それが大人たちにも評判となり、ブームとなったのです。

 デザインしたのは大阪生まれの玩具デザイナー・加藤裕三でした。このシリーズは、1993年までの6年間で150種類が商品化されています。彼は「おまけ」の原型を木で制作していました。木が持つ独特のぬくもりをそのまま残しておきたかったからです。そして手で触って動かす楽しさをコマ、やじろべえ、からくりなどの伝統的な遊びから取り入れて子どもたちに伝えようとしました。

 2001年5月5日「こどもの日」。加藤は50歳でこの世を去りました。彼はグリコの「おまけ」のほかにも、木のからくりおもちゃ、幼稚園の遊具、はりがねの作品など、とてもたくさんのおもちゃを制作し、展覧会の企画やおもちゃショップの経営、おもちゃミュージアムの構想など、玩具デザイナーの枠を越えた才能も発揮しました。本書は加藤裕三のおもちゃ作品、彼をとりまく多くの方たちの証言や言葉をすくいあげてまとめたものです。

【本書の内容】

    ●作品たち
    「ムフフフ…」かとうゆうぞうのおもちゃな世界
    ●第1章 <小さな><動く><もの>
    「ほら、みてごらん」「おまけ」へのユーワク
    ●第2章 カトウくんと遊ぼう!
    「ひとりでいてもいいんだ」子どもに密着できる目
    ●第3章 アフリカ・アフリカ
    「そこにおもちゃがあった」西アフリカ・ドゴンの村で脳天ショック
    ●第4章 かとうゆうぞう的半世紀
    「中途半端だけが美しい」昭和〜平成の時代を生きて
    ●第5章 十一人が語る加藤裕三
    「きのう会ったばかりで」今日は信じあえるエクスタシー
    ●第6章 着地点が出発点
    「もっと遠くまで行くんだ」有馬でやろうとしたこと
    ●第7章 加藤裕三の遺した遊び
    「時間があったら見て」展覧会から始まる未来

 

カトウくんのおまけ
玩具デザイナー加藤裕三の世界
吉田光夫著 1,900円(税別)
A5判:253ページ(カラー42ページ)
ISBN4-434-03384-0 C0072
発行:ダンク出版 発売:星雲社

●ダンク出版
〒110-0016 東京都台東区台東1-7-2 秋州ビル3F
TEL/03-3831-8882 FAX/03-3831-8885
http://www.dank.co.jp

※ご入用の場合は事務局に直接お問い合わせください。

●「加藤裕三のおもちゃ箱事務局」
〒550-0013 大阪市西区新町1-12-8-901<アトリエ・コム内>
Tel.06-6535-3400 Fax.06-6535-3401
E-mail a.com@fancy.ocn.ne.jp

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 グリコの動く「おまけ」の作者、として加藤裕三は少し世間に知られていると思う。
 おもちゃデザインという仕事のほかにも、いろんなことをしてきた。私は、友人のひとりとして、とくに最後の6年間、近くでつき合うことができた。加藤は、2001年の5月5日に病気で亡くなったのだが、彼がいなくなったという実感はあまりない。その感覚のまま、彼の遺したおもちゃの作品と、もっと広い意味で彼がつくり出した表現の世界を、自分なりに紹介していきたい。
 没後に彼の「おまけ」や「からくり」の作品展がつづいた。まず2002年1月から2月にかけて、大阪・ブックセラーアムズと、金沢・金沢市民芸術村。これは彼自身の念願だった作品集の出版と時機を合わせた企画だった。その後、5月に京都・法然院、7月に博多・FM福岡イムズホール、そして11月には、名古屋のギャラリー・プランネットで、展覧会はおこなわれた。
 これらの会場で、加藤の作品ははっきりと多くの人たちの支持を受けていた。作者が生きていないという事実は、何の関係もないかのように、彼のつくった小さな動くおもちゃやからくりの、シンプルなかたち、きれいな色、おもしろい動きに、みんな率直に共感を示してくれていた。
 とりわけ若い世代の「おまけ」に対するリアクションが、予想を超えた強さで伝わってきた。私も、他の友人たちも、それほど歳をとってるわけではない。だから、子どもの頃に遊んでなつかしさがある「おまけ」ではなく、50歳で死んだ加藤が、30代の後半から世に出した「おまけ」をもう一度見て、しっくり気持ちの収まりをつけようと思っていた。ところが、展覧会場は、もうめったやたらに明るかった。とくに10代後半から、20代にかけての人たちの歓声と、熱中するまなざしに圧倒された。私たちはその場で、「あいつ、きっとそのへんでニヤニヤして見とるな」とささやき合った…。(後略)

「はじめに」より

吉田光夫
1949年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業後、同人誌「個」「類」を経て現在は「BIDS」に参加。論考に「中原中也の解読」「震災論」、詩集『昆中都市』、共著として『思想としての風俗』(大和書房)などがある。本書は初の書き下ろし作品。

ソニー・クリエイティブプロダクツから加藤の「おまけ」をビッグサイズで復刻した木製トイ『グリコのおもちゃ箱』が発売されています。加藤はおまけの原型を「木」で制作していました。その原型を忠実に再現し、親子で楽しめるおもちゃになりました。
(全7種 各1,980円 ソニー・クリエイティブプロダクツ直営店「Mix!」などで)

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加藤裕三のおもちゃ箱事務局 a.com@fancy.ocn.ne.jp